AGA(男性型脱毛症)治療で用いられるミノキシジルの効果や副作用について解説します。
私はフィナステリド内服薬とミノキシジル内服薬を病院で処方してもらっています。
「ミノキシジルは危険！」という口コミが多いですが、実際どのような副作用があるのでしょうか？
目次
ミノキシジルについて
ミノキシジルには飲むタイプ(内服薬)と頭に塗るタイプ(外用薬)の2種類があります。
ミノキシジル内服薬(タブレット)
ミノキシジル内服薬はミノキシジルタブレット(ミノタブ)と呼ばれることがあります。錠剤を飲んで服用します。
現状、ミノキシジル内服薬を販売している製薬会社はありません。なぜなら厚労省が製造・販売を認可していないからです。したがって薬局では手に入りません。しかし、医師が院内処方することは可能で、AGA専門クリニック・皮膚科・美容外科クリニックにてミノキシジル内服薬が扱われています。
以下は私が通院している銀座総合美容クリニックで処方されたミノキシジル内服薬の写真です。
ミノキシジル内服薬
ミノキシジル外用薬(リアップ)
ミノキシジル外用薬は頭皮に直接塗るタイプの薬です。国内で販売されている製品は大正製薬のリアップのみです。リアップは一般用医薬品であるため薬剤師が常駐するドラッグストアで購入できます。
ロゲイン(米ファイザー社製)というミノキシジル外用薬を処方する病院が多いです。私が通院している銀座総合美容クリニックではミノキシジル外用薬を処方されませんでした。
ミノキシジルとプロペシア(フィナステリド)の違い
プロペシアは毛周期を改善して抜け毛を防ぎ、髪の毛が成長できるようにする薬です。詳しくはフィナステリド(プロペシア)の効果・副作用にまとめています。
一方、ミノキシジルは発毛を促進する薬です。
ミノキシジルとプロペシア(フィナステリド)の併用
AGA治療ではミノキシジルとプロペシア(フィナステリド)の併用が一般的です。プロペシアで毛周期を改善し、ミノキシジルで発毛を促進するという2段構えの方法になります。詳しくはAGAを改善して薄毛を治すたった2つの治療方法にまとめています。
私は実際にミノキシジル内服薬とフィナステリド内服薬を併用してAGA治療に取り組んでいます。
ミノキシジルの効果
ミノキシジルは薄毛に対してどのような効果があるのか解説します。
ミノキシジルで発毛を促進
ミノキシジルは発毛を促進します。血管を拡張することによって発毛する効果があります。発毛を促進する原理については未だ明確には分かっていません。ミノキシジルが毛乳頭細胞に働きかけてアデノシンを分泌させ、細胞増殖因子の産生を促進するという説が有力です。
もともとミノキシジルは血圧を下げるための薬として開発されました。服用している患者に発毛の副作用があらわれたため、薄毛治療の薬として研究が進み、現在ではAGA治療で利用されるようになりました。
ミノキシジルで効果が出始めるまでに必要な期間・時間
AGA治療は早い人で3ヶ月、通常は約6ヶ月治療を続けないと効果を判断できません。
ミノキシジル外用薬であるリアップは公式サイトにて6ヶ月を効果判断の目安とするよう呼びかけています。
私はミノキシジル内服薬を服用していますが、3週間経過して産毛が生え始めました。さらに初期脱毛があり、体毛が徐々に濃くなりました。
ミノキシジルは生え際のM字に効かない？
フィナステリドもミノキシジルも「生え際のM字に効かないのでは？」と疑問に思う方が多いようです。結論から申し上げますと、ミノキシジルは部位と関係ありません。
フィナステリド(プロペシア)の効果・副作用にも書きましたが、そもそもAGAによって生え際にある毛の寿命が来ていたら、もう何を施しても毛は生えてきません。毛周期の繰り返し数に制限があることを理解しておく必要があります。
なぜグリーン車にはハゲが多いのか(佐藤明男 医師)によれば、額の生え際は一度後退すると再成長しにくいといわれているそうです。したがって、生え際のM字部分は効果があらわれにくい箇所であるため、腰を据えてAGA治療に取り組まなければなりません。
ミノキシジルは耐性で効果がなくなる？
ミノキシジルの耐性に関する医学的なエビデンスはありません。つまり医学上は耐性が認められていないということです。
ミノキシジル外用薬は長期投与(2年間)によって有意に発毛を促進させたことが臨床試験で認められています。
長期服用していると発毛の効果を感じられなくなる原因の1つに「改善のピークを迎えたこと」が挙げられます。改善のピークとは、本来生えるポテンシャルのあった毛が最大限生えるようになった状態のことです。
先述の通り、毛周期の繰り返し数には上限があり、上限に達するとAGA治療をしても毛が再び生えてくることはありません。治療を始める前にAGAが進行していて毛が寿命を迎えていたならば、AGA治療をしても「全盛期のフサフサ状態」までは改善しません。
ミノキシジルの副作用・注意点
重大な副作用・死亡事故
ミノキシジルを服用すると心拍出量(心臓から運び出される血液量)が増加します。心拍出量に見合うだけの酸素供給がない場合、狭心症発作を起こす可能性があります。症状としては、胸の痛みを感じたり、心拍が速くなったりすることがあります。
ロゲイン(米ファイザー社が販売するミノキシジル外用薬)の開発中に3名、リアップ市販後の3年間に3名が循環器疾患で死亡しています。ただし、これらの件においてミノキシジルが循環器疾患に直接関係していたかどうかは不明で根拠がありません。
リアップ使用者3名の概要・死因は以下の通りです。
- 年齢不詳の男性：心停止
- 50代男性：心筋梗塞の疑い
- 60代男性：急性心不全
本件については2003年に長妻昭衆議院議員が質問主意書を提出して問題になりました。質問を受けて政府が出した答えは「因果関係は不明で、循環器疾患とミノキシジルの関連性が認められていないエビデンス(論文)がある」でした。以下は答弁書の引用です。
本件副作用報告に関する事情を聴取したところであるが、リアップの使用とこれらの症状の発現との間の因果関係を明らかにするような情報は得られていない。また、ミノキシジルの副作用については、二千三年七月二十八日発行の「Journal of Cutaneous Medicine and Surgery」に掲載された論文「Safety of Topical Minoxidil Solution: A One-Year, Prospective, Observational Study」によれば、疫学調査の結果、ミノキシジルの使用と循環器系の副作用の発現との間には関連があるとは認められない旨の結論が得られているとのことであり、本件副作用報告についても急性心不全等の症状の発現とリアップの使用との間の因果関係を明らかにすることは困難であると考えられるところ、現時点で政府として何らかの調査を行うことは予定していない。
(出典：第158回国会 衆議院議員長妻昭君提出医薬品の副作用に関する質問に対する答弁書)
因果関係が不明である以上、本件は参考になりません。例えば一般的な風邪薬を服用している方が100万人いると仮定します。風邪薬を服用している時に何名かが病気で死亡したとします。「風邪薬を服用していた。そして病気で死亡した」ということになりますが、風邪薬と病気の因果関係は分かりません。
一方ミノキシジル内服薬は、犬に対する実験でミノキシジル3mg/kgを投与したところ心臓破裂が起きた報告があります。
ではなぜ、このように発毛効果の高いミノキシジールを内服で使用しないのか、ということを説明します。これは、実験で犬に3mg/Kgの容量で内服させたところ心臓破裂が起こりました。これは、ミノキシジールが心筋のアポトーシス（細胞の自己死）を抑制することより心筋肥大が起こり破裂したと考えられたからです。その後、同様に何回も犬の実験を行いましたが犬の心筋破裂は起こらなかったということです。しかしながら、実際の人間に心臓破裂が起こったら重大事ですから、実際の頭髪治療には使われておりません。世界的にも、頭髪治療用の内服薬としてのエビデンスは無いと考えられています。
(出典：日本臨床毛髪学会)
この実験のポイントは2つあります。
- 3mg/Kgと用量が多く、例えば60Kgの男性に対して180mgの用量となる
- 同様の動物実験を繰り返したが心筋破裂は発生していない
AGA治療で処方されるミノキシジル内服薬の用量は2.0mg〜5.0mgが一般的です。どんな薬でも用量を増やし過ぎれば問題が生じるのは明らかです。
動物実験の結果が影響し、人間に対してはミノキシジル内服薬のAGAに対する臨床試験が行われていません。したがって、AGA治療におけるミノキシジル内服薬の有効な医学的エビデンスはありません。日本皮膚科学会が定める男性型脱毛症診療ガイドライン2010年版でもミノキシジル内服薬に関する言及はありません。
肝臓(肝機能)への影響
ミノキシジル内服薬は肝臓で代謝される薬であり、少なからず肝臓に負担がかかります。
長期服用する場合や、アルコール摂取の習慣がある場合、持病の薬を併用する場合、肝臓により強い負担がかかり続けます。服用を開始する前に、肝機能が正常かどうか検査し、定期的に肝機能の検査を受けるべきです。
皮膚
ミノキシジル外用薬は、頭皮の発疹・発赤、かゆみ、かぶれ、ふけ、使用部位の熱感等を生じる可能性があります。
代謝系・むくみ
原因のわからない急激な体重増加、 手足のむくみを生じる可能性があります。
血圧低下による低血圧症状
ミノキシジルはもともと高血圧患者の血圧を下げる薬として開発されました。ミノキシジルを服用すると血圧が下がる可能性があります。稀に動悸、頭痛、気が遠くなる、目まい、倦怠感が出る場合があります。
体毛が濃くなる
ミノキシジル内服薬は体毛が濃くなることで有名です。私はミノキシジルの服用を始めてから指毛・眉毛・腹毛などが濃くなったことを実感しました。
ミノキシジル内服薬服用後に指毛が濃くなった
心臓・腎臓・肝機能の障害や人工透析患者は使用不可
心臓・腎臓・肝機能の障害や人工透析をしている方は使用できません。
高齢者・血圧異常・循環器疾患のある方は使用不可
高齢者・低血圧または高血圧・狭心症や心臓に関する病気・循環器疾患がある方は使用できない場合があり、医師に相談が必要です。私は治療を開始する前に血液検査や血圧検査を行いました。
アレルギーがある方は使用不可
ミノキシジルに対してアレルギー反応がある方は使用できません。
傷や肌荒れがある方は使用不可
頭皮に肌荒れや傷がある場合はミノキシジル外用薬を使用できません。
女性の服用について
妊娠中・授乳中の女性はミノキシジルを使用できません。
未成年は使用不可
未成年者はミノキシジルを使用できません。
ミノキシジル内服薬(タブレット)の飲み方・服用方法
ミノキシジル内服薬の服用方法
ミノキシジル内服薬(タブレット)の用量・用法
食前食後関係なく1日1回1錠を毎日決まった時間帯に服用します。用量は1回あたり2.0mg〜5.0mgが一般的です。私は銀座総合美容クリニックでAGA治療を受けていますが、最初の1カ月は2.0mgが処方されました。2カ月目以降は4.0mgを服用しています。
お酒(アルコール)摂取に関する注意事項
お酒を飲む場合は前後3時間空ける必要があります。
他の薬との飲み合わせについて
私は銀座総合美容クリニックに通院していますが、一般的な風邪薬・頭痛薬・アレルギー薬・胃腸薬・鎮痛剤などは問題ないと言われています。ただし、血圧に関する薬を服用されている場合は服用できない場合があり、医師への相談が必要です。基本的には服用しているすべての薬を医師に報告し、飲み合わせに問題がないか確認する必要があります。
ミノキシジル内服薬(タブレット)を何時に飲むか？
フィナステリド(プロペシア)の効果・副作用にも書きましたが、何時に飲まなければいけない、何時に飲んだから効果が出る、というものではありません。お酒を飲むことや生活習慣を考慮して、確実に24時間周期で服用できる時間帯を選ぶことをおすすめします。
ミノキシジル内服薬(タブレット)の添付文書
ミノキシジル内服薬(タブレット)は日本では製薬会社から販売されていないため、日本語で公開されている添付文書はありません。
以下は米ファイザー社が販売するロニテンというミノキシジル内服薬の添付文書(英文)です。
ミノキシジル外用薬(リアップ)の使い方・服用方法
ミノキシジル外用薬の用量・用法
1日2回、1回1mlを脱毛している頭皮に塗布します。(※リアップの場合)
ミノキシジルの濃度は、男性の場合は5%、女性の場合は1%が推奨されています。(参考文献：日本皮膚科学会 男性型脱毛症診療ガイドライン2010年版)
ミノキシジル外用薬の添付文書
ミノキシジルの初期脱毛
ミノキシジルの初期脱毛は短くて細い毛が抜ける
毛には毛周期があり休止期→成長期→退行期→休止期…というサイクルが繰り返されます。退行期になると毛は成長しなくなり、休止期になると毛が抜けおちます。
毛周期
AGAになると毛の成長期が短くなるため、毛が細く短い状態で成長をやめます。成長が止まった毛は、やがて抜け落ちます。
ミノキシジル服用による初期脱毛では、細くて短い毛が大量に抜け落ちることがあります。ミノキシジルによって発毛が促進されることで、成長が止まって抜け落ちる予定だった毛が、より早く抜け落ちるようになるからです。抜け落ちた後は、新しい毛が成長し始めます。
ミノキシジルによってハゲるわけではなく、毛が生まれ変わる過程であることを理解しておく必要があります。
ミノキシジルの初期脱毛はいつ始まる？
一般的に3週間ほどで初期脱毛があらわれます。私の場合は服用を開始してから20日目に初期脱毛が始まりました。
ミノキシジルの初期脱毛期間はいつまで？
私の場合は服用を開始してから20日目に初期脱毛が始まり、28日目まで抜け毛が多かったです。
ミノキシジルの初期脱毛は見た目に影響する？
見た目に影響する可能性はあります。私の場合は見た目に影響しませんでした。AGAによって成長期が短くなった細くて短い毛が多く抜けたのですが、細くて短い毛であるため、見た目に影響しませんでした。
ミノキシジルの購入
ミノキシジルを病院で処方してもらう
ミノキシジル内服薬はAGA治療に力を入れている医療機関でなければ処方してもらえない可能性が高いです。なぜなら日本皮膚科学会の男性型脱毛症診療ガイドライン2010年版にてミノキシジル内服薬については一切言及がないからです。医療機関のAGA治療は基本的にガイドラインに沿って実施されています。
ミノキシジル外用薬はガイドラインで強く推奨されているため、AGA治療で医療機関を受診すれば高い確率で処方してもらうことができるでしょう。
「ミノキシジル内服薬を処方する場合はミノキシジル外用薬を処方しない」病院があります。特にAGA専門クリニックは、その傾向が強いです。私は銀座総合美容クリニックに通院していますが、ミノキシジル内服薬を処方され、外用薬は処方されませんでした。
関連：AGA治療で病院に通院する方法・流れ(予約から薬を受け取るまで)
ミノキシジル育毛剤を市販で購入
ミノキシジル外用薬は唯一1つだけ市販されています。それが大正製薬のリアップです。リアップはOTC医薬品(一般用医薬品)であるため、医師の処方を必要としません。薬剤師が在中するドラッグストアで購入することが可能です。
ミノキシジルを個人輸入の通販で購入
海外製のミノキシジル内服薬および外用薬は、個人輸入の通販で購入することが可能です。自己責任で利用することになります。
病院や製薬会社は「個人輸入の通販で購入するのはやめてください」と警告するのが一般的です。消費者の立場としては「病院や製薬会社が儲からなくなるから悪く言っているのだろうな…」と思うのが普通ですよね。実際は病院や製薬会社が警告している通り、それなりにリスクがあります。
もし個人輸入の通販を利用しようと思うのならば、デメリット・リスクを確実に理解して、対策・マネジメントをする必要があります。例えば以下のような問題があります。
- 偽薬・使用期限切れのリスク
- 副作用・体調管理のリスク
- 販売会社の実態がよく分からない(代表者の存在や会社の所在、連絡先が分からない)
以上のデメリット・リスクを引き受けることによって得られるリターンが「お金」です。病院で治療するより安くなる可能性が高いです。私にとっては、リスクの割に得られるリターン(お金)が少ないと判断したため、病院でのAGA治療を選択しました。
ミノキシジルの価格
ミノキシジルは健康保険適用外
ミノキシジルの処方は健康保険が適用されませんので、自由診療になります。したがってクリニックによって料金が異なります。
ミノキシジルは医療費控除対象外
AGA治療にかかる費用は医療費控除の対象外です。
関連：AGA治療の費用は確定申告で医療費控除できる？できない？
ミノキシジルの価格相場
| 価格相場 | 備考 | |
|---|---|---|
| ミノキシジル内服薬1ヶ月分(病院処方) | 11,422円(税込) | 全国6病院から算出。価格帯は7,776円〜16,200円 |
| ミノキシジル外用薬1ヶ月分(病院処方) | 6,027円(税込) | 全国11病院から算出。ほとんどの病院がロゲイン5%を処方。価格帯は4,000円〜8,640円 |
| リアップX5プラス60ml(ミノキシジル5%・1ヶ月分) | 7,611円(税込) | 基本的に定価販売 |
まとめ
ミノキシジルの効果・副作用などについて紹介しました。
ミノキシジル外用薬であるリアップは市販されていますので、お手軽に試すことができます。内服薬は副作用によるトラブルを避けるために、病院で検査を受けて、医師から処方してもらうことを強く推奨します。